ツバキ 三月の椿
岩波新書の「花を旅する」栗田勇著(2001年3月21日刊)を参照しながら、
一年かけて、私も花の文化を考える旅をすることにします。
さて、三月の椿です・・
椿で思い浮かべるのは、花椿っていう資生堂のあれ
黒澤明の(?→夏目漱石?)椿三四郎
マリア・カラスの(?→ヴェルディ)ラ・トラヴィアータ
いや、漱石は三四郎ですが、黒澤明は
姿三四郎(1943/東宝)
椿三十郎(1962/東宝=黒澤プロ)
…でした…

photo by葉っぱの岬
Camellia Japonica L.(学名)
common camellia:rose camellia(英名)
山茶、海石榴(中国名)
バラ科サクラ属ウメ亜属
東アジア固有(中国、朝鮮、日本) 常緑高木
木:高さ18メートル、太さ50センチに達するものもある
長命→防風、防潮、目隠しの生垣
枝:無毛
葉:楕円形または長楕円形
長さ6〜12センチ、幅3〜7センチ
縁に上向きに細かい鋸歯があり
表面は緑色で光沢あり→周年、葉を鑑賞する庭園樹
花:枝先の芽の苞葉腋(ほうようえき)に普通一個つく
柄がない
野生の花は杯状
直径3〜8センチ、普通5センチ
花弁5〜6枚、基部で合生
花色:紅色 (時に濃紅紫色 淡紅色 白)
おしべ:多数が下部で合生 筒状になり、
またその筒上部は基部で花弁と合成している
鳥媒花:筒の下部に多量の蜜がたまり、
メジロなどの小鳥がよく蜜を吸いにきて、送粉を行う
果実:球形 果皮が厚い 成熟すると3片に裂ける→ツバキ油※
材:年輪がつまり硬くて強い 磨けば光沢が出る→建築や器具に用いる
平凡社大百科事典(石沢進)
photo by
M's Gallery日本の野生のツバキ
ヤブツバキ(ヤマツバキ)
C.japonica var. japonica L.
ツバキの野生種
リンゴツバキ(ヤクシマツバキ))C.japonica var.macrocarpa Masamune
果実が大きく5〜7センチ鹿児島県屋久島ほか
ユキツバキC.rusticana Honda
日本海側山地の多雪地に限られている
幹丈が低い 葉の門脈が透明 おしべが短く黄色
ヒメサザンカC.lutchunensis T.Ito
沖縄 花形は椿に似るが著しく小形の白い花を咲かせる
花に芳香あり
平凡社大百科事典(石沢進)
泉さんの
気ままニュース
ユキツバキの特徴(枝に弾力がある)や
花が灰色がかかった色になるブルーイングの話
では、「花を旅する」(栗田勇著)の要約(1)を……
先人が携えた椿の話
柳田国男の「豆の葉と太陽」の中の
「椿は春の花」(昭和16年)の紹介
北の海岸線沿いに椿の群生がなぜあるのか
日本人が千何百年の間に海岸線を北上してゆくときに携えていった
象徴として椿にまつわる伝説
八百比丘尼(若狭の空印寺の洞穴にすむ)、
禁断の霊肉、人魚の肉を食べたため、八百歳まで生き、
杉やイチョウなどの木、特に椿の枝を全国に植えて回ったという
残された像は、花の帽子をかぶり、手に白玉椿の小枝を持っている
行く先々で神意をト(ぼく)した霊木
特に雪国では春を告げる木
『万葉集』にすでに、木に春という字が用いられている
八百比丘尼の宿り木は椿であるが、
その背景には熊野比丘尼たち、
廻国の霊能巫女(みこ)の姿が浮かぶ
「花を旅する」(栗田勇著)の要約続き(2)……
市(いち)の話
大和古代の椿というと、
海石榴市(つばいち)が浮かぶ
『万葉集』海石榴市の八十(やそ)の巷(ちまた)
神社やお寺などの縁日に「市」が開かれた
聖域→祭礼のために人が集まる→いわゆる市場に
折口信夫説…市=山人が出て来て鎮魂をするところ
山姥が下りてきて椿の杖で春の言触(ことふ)れをする
『古事記』の
仁徳天皇の皇后磐之姫の歌
葉広(はびろ)
斎(ゆ)つ 真椿 其(し)が花の 照り坐(いま)し
其が葉の広り坐すは 大君ろかも
椿の霊力の話
平安時代の正月行事の卯杖や卯槌に用いられた
羽黒修験の峰入りに 椿が供花される
東大寺のお水取り(2月23日)
…紅白の造花の椿が千年来供花される
薬師寺の花会式
『日本書紀』「景行記」 土蜘蛛退治伝説
海人族のもたらした
椿にまつわる聖樹信仰
海沿いに椿の群生を広げていったまれびと訪人伝説
野生の魅力
象徴としては男性的
→
王朝文化の中で編まれた和歌集には
椿を歌ったものはほとんど見当たらない

「花を旅する」(栗田勇著)の要約(3)……
再発見される椿
鎌倉末
室町・桃山時代に突然人気を盛り返す
古代的呪術性が組織的宗教に吸収され、
古代の依り代、憑依や物の怪としての霊性が薄れ
新鮮な世俗的美として見直された
書院飾りの立花
連歌や生け花や茶の湯の宴席の花として見直された
雪舟の
山水花鳥図屏風
白い大輪ボタンの添えとして描かれる
「花を旅する」(栗田勇著)の要約続き(4)……
江戸の園芸ブームの中で
桃山時代
海北友松 狩野山楽など多くの作品が産み出される
琳派もこれを好む
焼き物
古伊万里や古九谷の鉢や皿にデザイン
→生活に根付いた椿ブーム
源頼朝
三浦三崎の花の宴
桜の御所 桃の御所 椿の御所

徳川家康
御花畑 左半分に椿の古木10本だけ
「江戸屏風絵」
三代家光が園芸に熱中
寛永七年(1630)『百椿集』安楽庵策伝
宮内庁に伝わる『椿花図譜』7百余種
寛文四年(1664)『花壇項目』ほか
(青木宏一郎『江戸の園芸』)
ツバキ属Camelliaは中国原産が多い
トウツバキC.reticulata Lindl.
サルウィンツバキC.saluenensis Stapf ex Bean
雌しべに毛があることで区別される
グランサムツバキC.granchamiana Stealy
香港の固有種 白色の花 径12〜14センチ
原産地不明 桃色でい小さな花を持つ
トガリバサザンカC.cuspidata Wright ex.Gard
シラハトツバキC.fraterna Hance
テマリツバキCmaliflora Hook
カメリア・ロサエフロラC.rosaeflora Hook.
平凡社大百科事典(石沢進)

photo by
ぱんだ雑貨店(2011-03-09リンク直し済み)
椿の園芸種
椿花図譜 江戸中期 600種
茶道や華道の発達して室町・桃山時代を経て
には広く一般庶民に普及
江戸末期から西欧において人気を呼び
第2次世界大戦後アメリカやオセアニアに移ったブームが
日本に再びツバキの園芸価値を見直すきっかけに
点在国内で1300品種
欧米で1万を超える品種がある
花型→弁の数増やす
八重咲き、獅子咲き、牡丹咲き、千重咲き
花径→4〜5センチの極小輪から20センチを越す長大輪まで幅が大きい
葉→百合葉、鋸葉、柊葉、桜葉、杯葉、錦魚(きんぎょ)葉、団扇葉
錦葉(斑入り葉
枝→しだれ、雲竜(うんりゅう)
西日本にはツバキの園芸品種とサザンカの自然交雑して生じた
ハルサザンカという雑種が多い
平凡社大百科事典(桐野秋豊)
「花を旅する」(栗田勇著)の要約続き(5)……
椿姫の人気
元禄の椿ブームのころ
長崎から苗・種輸出
19世紀後半豪華絢爛な大輪の椿のブーム
その象徴が
フランスのディマ・フィスの『椿姫(La dame aux camelias』(1846)
1952初演の芝居→(229ページの記載ミス)
イタリアの作曲家ヴェルディのオペラ
「ラ・トラヴィアータ (La traviata)」(1853)
WEB
検索
椿の家紋はあまりないようです
ネクタイ工房 さん
こちらに2種類あり
きかんしさんの印刷用語地紋(新聞見出しの背景模様)
椿紋 No87
「
椿は春を告げる花で、呪力があり古くは神木とされていました。
武家は花が落ちる様子が首が落ちる様子に似ていることから
敬遠されていましたが、
華やかなことから庶民には愛好されていました。」
ツバキの語源?
以下、牧野日本植物図鑑(北隆館1949)より。
和名は厚葉木の意という
また津葉木の儀にて葉に光沢ある故いうならん。
椿は和字にて春盛んに花咲く故、この字を作りしなり。
中国の椿(チン)と混同するべからず
http://www.eisai.co.jp/museum/herb/familiar/crest.html
「名前の由来は艶葉木、厚葉木がつまったとする説があります。 」
学名: Camellia japonica L.
var. hortensis Makino

photo byぱんだ雑貨店

八重咲きの「乙女椿」
Wikipediaにある、サザンカと椿の見分け方の一つ
「ツバキは雄しべの花糸が下半分くらいくっついているが、サザンカは花糸がくっつかない。」
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