岩波新書の「花のある暮らし」栗田勇著(2002年10月刊)を参考に
1年の花の文化を考える旅・・
さて、二月の柳です・・


目次読書

春の知らせ
様々な柳
小野道風と柳の枝
万葉の歌に込められた思い
再会、運命を託して
叙情と畏れ
西洋文化の中の柳
柳の二面性を取りこんで


ネコヤナギ
photo by 足成

ネコヤナギ(猫柳)

学名:Salix gracilistyla
科名:ヤナギ科


原産地:東北アジア原産(日本韓国中国)
Wikipedia
Salix gracilistyla is a species of willow native to Japan, Korea and China known in English as Rosegold Pussy Willow.
http://stewartia.net/engei/tree/Yanagi_ka/sidareyanagi.htm 柳の対比

ユキヤナギ(雪柳)

学名:Spiraea thunbergii
科名:バラ科

Wikipedia

春の白い小花


雪柳
2007年3月31日photo by M

春の知らせ

ネコヤナギの銀鼠(ぎんねず8の輝きをを春の知らせと見ていた万葉人

様々な柳

まず思いつくものは、ネコヤナギとシダレヤナギ
水辺が好き
川辺、池端に生える 植物学の分類では300種類もある
日本だけでも32種類ある
雌雄別株
ネコヤナギは春の先駆け、芽吹いて花を咲かせる
(猫の毛のように見えるのが花)
しだれ柳場目吹くのはその2ヶ月くらいあと(4月か五月)
「柳青める日」
中国では、旅人の門出を歌うネコヤナギの詩も多い
美しく頼もしいが、家の中に持ちこむと(その生命力が)ちょっと怖いので、
屋敷の周辺部を取り巻くように植えた(日本=街路樹、庭園の縁取り)

小野道風と柳の枝

書に秀でた人物(平安時代)
字が上手になるように努力してもうまくいかない・・蛙が柳の葉に飛びつこうとしていた・・ 「蛙の心境になって何度でも努力すれば、必ずできる」
(人形浄瑠璃『小野道風青柳硯』江戸時代) 餅花・・声明をことほぐ
柳箸、削 掛け
川の神の依代
二つの異界の境を示すもの
・・しだれ柳の枝が下を向いて地へ向かって伸びる・・生命力のエネルギーの一種の裏面


万葉の歌に込められた思い

『万葉集』柳の歌39首、川柳3種
春、生命力

霜枯れの
冬の柳は
見る人の
蘰(かづら)にすべく
萌えにけるかも

巻10,1846


柳の花
取り持ちて見れば
我がやどの
柳の眉し
思ほゆるかも

巻10,1853


うち上る
佐保の河原の
青柳は
今は春べと
なりにけるかも

大伴家持 巻10,1433


梅の花
咲きたる園の
青柳は
蘰にすべく
成りにけらずや

巻5,817


青柳の
上枝(はつえ)攀(よ)じ取り
蘰くは
君が屋戸にし
千歳(ちとせ)寿(ほ)ぐとそ

巻19,4289


楊こそ
伐れば生えすれ
世の人の
恋に死なむを
如何に為(せ)よとそ

巻14,3491

再会、運命を託して

中国では、旅や別離の時再会を期するシンボル

春の日に
張れる柳を 取り持ちて
見れば都の
大路思ほゆ

巻19,4142


叙情と畏れ

『古今和歌集』

みわたせば
柳桜をこきまぜて
宮こぞ
春の錦なりける

巻1,56


『新古今和歌集』

春雨の
ふりそめしより
青柳の
いとの緑
色まさりける


巻1,68

打なびき
春はきにけり
青柳の
かげふむ道
人のやすらふ

巻1,69


み吉野の
大川のべの
古柳
かげこそみえね
春めきにけり


巻1,70

しら雲の
たえまになびく
青柳の
葛城山(かづらきやま)に
春風ぞ吹く

巻1,74


能「遊行柳」
世阿弥の「西行桜」に触発された観世信光の作
老い朽ちた柳の精

西洋文化の中の柳

ホメロス『オデュッセイア』
「冥界、地獄の入口に柳の木を見た」
旧約聖書「詩編」
「われらはバビロンの川のほとりにすわり、シオンを思い出して涙を流した。 われらはその中に柳にわれらの琴をかけた」(第137篇)
アルフレッド・ミュッセ(19世紀)
「われ死なば、植えよ、友。
一本(ひともと)の柳を墓に
アールヌーボーのデザインで柳が喜ばれた。
チャールズ・レニー・マッキントッシュ
ティールーム=ウィロー(柳)と名付けた
女性的であるにもかかわらず、強いものが入っている

柳の二面性を取りこんで

日常雑器・・柳行李(やなぎごうり)、柳の端、爪楊枝
折れにくく、細工がしやすい
柳に風
「柳の眉」
「柳の間」
「柳腰」(やなぎごし)
柳はちょっと裏があるということで隠語で使う
花柳界・・ 江戸時代の遊郭は一種の文化圏を作っていて格式が高い
どんな花や木にも新霊がやどっていると日本人は思ってきた。
成長する陽の部分、 深い陰の部分、その二つを併せ持っている。日本人は二つに分けないで、その両方を敬ってきた。(p199)

平凡社大百科事典(後ほど参照します)



lastModified: 2011
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